いつ交渉するか (When to Negotiate)

交渉が発生するためには、NPCが英雄たちと交渉することに関心を持っている必要がある――しかし同時に、英雄の提案にただ即座に乗るわけにはいかない理由も持っていなければならない。交渉は、NPCの中に「関心」と「ためらい」の間の緊張感がある場合にのみ行われる。例えば、キャラクターたちが王に軍隊を隣国へ派遣してデーモンの侵攻と戦うよう求めた場合、王には葛藤が必要だ。彼は侵攻を止めたいと思っているが、自国民を無防備にしたまま、外国を守るために兵士の命を危険にさらしたくはない。英雄が王の軍隊の助けを借りたいのであれば、交渉が必要となる。

キャラクターがNPCを自分たちの考えに納得させようとするたびに、交渉ルールを使うことが期待されているわけではない。例えば、捕らえたカルト信者からカルトのリーダーについての情報を聞き出そうとする場合、〈嘘(Lie)〉スキルを使った「存在感(Presence)」テスト、あるいは〈脅迫(Intimidate)〉を使った「筋力(Might)」テストを1回行うだけで十分だろう。地元の錬金術師を誘惑して『回復ポーション(Healing Potion)』をタダで手に入れようとするキャラクターは、おそらく〈誘惑(Flirt)〉スキルを使った存在感テストを行うだけでよい。

対照的に、交渉は通常、冒険の行方を大きく左右する情報、アイテム、あるいはサービスを提供できる、名前のある重要なNPCと英雄たち全員がやり取りする場合に行われる。多くの場合、これは英雄たちが強大な力を持つアイテム、リテイナーや仲間、影響力のある組織や国家の支援、あるいは物語のどんでん返しに値する情報を求めている場合である。リッチを説得して伝説の『コデックス・モルティス(Codex Mortis)』を借りる、ドラゴンを説得して魔道士の塔への攻撃を止めさせる、あるいは敵軍のリーダーたちを説得して退却させるといった状況は、交渉の出番だ。

交渉を成功させるには、英雄たちはNPCを説得して自分たちの望むことをさせるために、説得力のある「主張(Arguments)」をしなければならない。「言うことを聞かなければ殺す」という脅しは、〈脅迫〉スキルを使った1回の筋力テストを伴うかもしれないが、それは交渉術ではない。

交渉の限界 (Limits of Negotiation)

プレイヤーの中には、直感的に、交渉ルールがマインドコントロールのような超能力を与えてくれるものだと感じる人がいるかもしれない。彼らはNPCを複雑な存在として想像することに慣れておらず、交渉が完全に不合理、あるいは文字通り不可能な状況で交渉を試みようとすることがある。英雄がいかに説得力に溢れ、雄弁であったとしても、悪の道を進むシユール卿(Lord Syuul)を改心させて庭師にさせるような主張は存在しない。交渉によって、女王が冠を英雄たちに手渡し、彼らを国の新しい統治者に指名するように仕向けることは通常できないし、ドラゴンを感化させて溜め込んだ財宝をすべて差し出させることもできない。交渉が機能するのは、NPCが英雄たちに与えることを真剣に検討してくれるような何かを求めている場合に限られる。

交渉はNPCの人格を変えるプロセスではない。 むしろ、英雄たちはNPCに対し、普段とは異なる行動をとることが、そのNPCの「キャラクター(性格・立場)として」いかに理にかなっているかを理解させようとしているのだ。悪のボスのそれまで忠実だった副官を説得して、過ちに気づかせることは十分にできるだろう。それは古典的なドラマの形式だ。しかしその場合でも、あなたは彼の人格を変えているのではなく、彼の現在の悪行こそが「彼らしくない」のだと説得しているのである。「これが、お前の本来の姿か? お前は、そんな風に人々の記憶に残りたいのか?」

一部のプレイヤーが、「とにかく俺たちが言う通りにしろ、さもないと……!」とキャラクターに言わせて、交渉システムを目的のための手段として使おうとするなら、現実の人間(NPCを含む)のほとんどはそのようには動かないことを彼らに思い出させてあげるとよい。そのような態度で交渉を始める英雄は、交渉が始まる前に失敗に終わる可能性が高いだろう。

暴力の脅威 (The Threat of Violence)

現実世界では、交渉に即座の暴力の脅威が伴うことはめったにない。大使たちが殴り合いを始めることは通常ない。しかし、これは英雄ファンタジーRPGであり、重武装し、精神の力で現実を改変できる英雄たちが登場する。暴力の脅威はすでに暗黙の了解として存在しているのだ。関係者全員が、キャラクターたちがいつでも「鋼を引き抜く(Draw steel)」可能性があることを知っている。

ディレクターは通常、事態が暴力に転じる潜在的な可能性は、すべての交渉においてすでに考慮されているものと仮定する。しかし、英雄たちがその脅威を前面に押し出すことに決めたなら、彼らは交渉の領域を離れ、異なる種類の関係に足を踏み入れたことになり――おそらく、鋼を引き抜くべき時が来たということだ。

交渉とは、誰かを説得して、あなたの目標を達成することが良いアイデアだと納得させ、自発的に助けてもらうことである。あなたに協力することが賢明で論理的である、あるいは協力することで自分たちが良く見える、と思わせるのだ。英雄は誰かを暴力で脅し、望むことを無理やりさせることも絶対にできるが、これは極めて一時的な状態にすぎない。脅されたNPCは、自発的に依頼されたことをしているわけではない。彼らは暴力の脅威の下でそれをしており、その脅威が明白な間だけ従うのであって――その後、逃げ切れると思えばすぐに以前の振る舞いに戻るだろう。

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